※この記事は、未視聴の方にも読んでいただけるよう、物語の核心には触れていません。すでに観た方には、共感や新たな視点をお届けできれば幸いです。
Basic Info 🎬
| ■ 監督 | フランソワ・オゾン |
| ■ 脚本 | フランソワ・オゾン |
| ■ 原作 | ジョルジュ・ベール&ルイ・ヴェルヌイユによる戯曲『Mon Crime』 |
| ■ 出演 |
ナディア・テレスキウィッツ レベッカ・マルデール イザベル・ユペール ファブリス・ルキーニ |
| ■ 音楽 | フィリップ・ロンビ |
| ■ 公開年 | 2023年 |
| ■ 上映時間 | 103分 |
| ■ ジャンル | クライム・コメディ/ノワール/風刺 |
Story Brief 📖
舞台は、1930年代のパリ。
売れない新人女優マドレーヌは、駆け出しの弁護士・ポーリーヌとルームシェアをしながら、日々の暮らしに苦労していた。 家賃も滞納し、にっちもさっちもいかなくなったある日、マドレーヌは大物映画プロデューサーのモンフェランに呼び出される。
しかし数日後、モンフェラン射殺の容疑で逮捕されるマドレーヌ。 彼女の弁護を引き受けたのは、親友であり、まだ実績のない若き女性弁護士・ポーリーヌだった。
マドレーヌは法廷でこう主張する──
「あれは正当防衛でした。」
スキャンダルに飢えた世間は、この“悲劇のヒロイン”に熱狂。 裁判は、真実を問う場から、やがて一大スペクタクルへと変貌していく。
“罪”とは誰のものか?芝居と現実の境界は、どこにあるのか?そして、語られなかった真実は──。
Trivia
- オゾン監督は、美術チームに「1930年代の“アメリカ映画の中にあるパリ”」を再現するよう指示。現実のパリではなく、理想化されたグラマラスな“映画の中のパリ”を描いた。
- 若手主演のレベッカ&ナディアは毎日撮影に参加していたため、現場にリラックスして臨んでいたという。一方、ベテラン勢のイザベル・ユペールらは短期撮影だったため、むしろそちらの方が緊張気味だったとか。監督は「彼らはロールスロイスのような俳優たち」と語り、信頼を寄せている。
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オゾン監督は「この物語を現代に置き換えていたら、SNSや#MeTooを描く必要があり、コメディではなく社会派ドラマになっていただろう」と語り、あえて1930年代を舞台にすることで“笑いと距離感”を両立させた。
出典は全てUGC(フランスの映画館&配給会社) のフランス語記事を翻訳したものです
For you or Not? 社会派ではない社会派🏙️
社会風刺で、フェミニズムで、クラシックで、コメディで、法廷劇で…。挙げればキリがないほどのジャンル詰め合わせ映画。
なのに観ていて疲れないし、嫌味もない。むしろオシャレで素敵に感じてしまう。舞台を現代に置き換えず、1930年代のままで今風に仕上げた監督の手腕は見事。
あえて“社会派”な作品にしていない、という選択。
ただ、そこは好みが分かれるところかもしれない。
たとえば、ハーヴェイ・ワインスタインの性暴力事件を描いた『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』や、カトリック教会の児童虐待事件を追った『スポットライト 世紀のスクープ』のような、現代的でシリアスな視点の作品が好きな人には、やや軽すぎると感じるかもしれない。
同じくフランソワ・オゾン監督の『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』を観たあとに本作を観たら、きっと驚くはず😳
ちなみに私は、今あげたすべての作品をオススメしたいと思っています。
First Impression 時代の空気を感じる🇫🇷
舞台は1935年。その時代に合わせるように、映画全体もモノクロ映画を彷彿とさせる独特の雰囲気をまとっています。特に室内や屋上のシーンは、あえて“セット感”を残した造りになっているのが印象的。
しかしそれは決してチープなわけではなく、むしろ作品に説得力を与えていたように思います。古典的なモノクロ映画をそのままカラーに移したかのような映像美に、私は序盤の10分ほどでこの作品に惹き込まれてしまいました🫢
さらに心地よいのは、随所に散りばめられたユーモア✨
女性の社会的立場や生きづらさを扱った作品はどうしても重くなりがちですが、本作はそうしたテーマを軽やかに包み込み、最後まで観客を楽しませ続ける力を持った作品でした。
Highlights 押し寄せるジャンルの波🌊
本作で特に印象的だったのは、ジャンルを横断するような展開の巧みさです。むしろ「ジャンルの豊富さ」と表現した方が近いかもしれません。
物語は女性の社会的地位を背景にしつつ、フランスらしいユーモアが随所に散りばめられています。そこにミステリーの要素が加わり、観客を引き込む謎が展開。さらに法廷劇ならではの緊張感や、ロマンス、シンデレラストーリー的な要素までも絡み合い、作品に奥行きを生み出していました。
これほど多彩なジャンルを盛り込みながらも、全体として軽やかでスッキリした印象を保っているのは、監督の見事な手腕だと感じます。
Let’s Be Honest レトロって素敵😎
正直なところ、本作は決して大衆的な作品ではないように思います。日本で大きく宣伝されたわけでもなく、監督のフランソワ・オゾンも「映画好きなら知っている」という位置づけの存在だと思います。
どちらかといえば、映画好きや舞台に親しんでいる人に向いた作品。ただ、普段あまり映画を観ない人がどう感じるのかも気になるところです。
観ていて感じたのは「過去の名作への入り口になり得る」という点。たとえば『ローマの休日』のようなクラシック作品も、この映画をきっかけに楽しめるかもしれない──そんな気持ちにさせられました。
それにしても、1930年代の車やレトロなファッションの格好良さとおしゃれさには、つい目を奪われてしまいます💇♀️✨
Takeaway 字幕の心地よさ🎵
私は普段は断然“吹替派”。けれど、この作品は映像や雰囲気、そしてフランス語だからこそ成立している部分が多いと感じました。
吹替派の中には「字幕版しかないなら観ない」という人もいますが、食わず嫌いせずに挑戦してほしい一本です。むしろ言語が持つリズムや雰囲気が、作品の魅力をいっそう際立たせているように思います。
本作は“女性の社会的地位”をユーモアを交えながら描き、同時に現代に通じるテーマも含んでいます。単なる“ユーモラスな作品”にとどまらない深みを持っているので、ぜひそこも味わってほしいです😌
Final Note📝
『私がやりました』
現代にも通じるテーマを、ユーモアとエレガンスで描いたトレビアンな一本。
Trailer 公式予告💻
出典:ギャガ公式YouTubeチャンネル
Subscription 配信📺
・Prime Video※ 配信情報(2025年10月時点)配信状況は変更される可能性があります。