I AM MOTHER『アイ・アム・マザー』感想 | ロボットお母さんは善か悪か

※この記事は、未視聴の方にも読んでいただけるよう、物語の核心には触れていません。すでに観た方には、共感や新たな視点をお届けできれば幸いです。

Basic Info 🎬

■ 監督 グラント・スピュートリ
■ 脚本 マイケル・ロイド・グリーン
■ 出演 クララ・ルガアード
ヒラリー・スワンク
ローズ・バーン
■ 音楽 ダン・ルースコンビ
アントニー・パートス
■ 公開年 2019年
■ 上映時間 133分
■ ジャンル SF/スリラー

Story Brief 📖

人類滅亡後の未来。高性能なロボット〈マザー〉によって、人類を再生させるシステムが起動する。選ばれた一つの胚から子どもが誕生し、地下施設で育てられていった。

それから38年後──〈マザー〉と共に暮らす少女は、「外の世界は汚染されている」と教えられながらも、やがて外の世界への関心を募らせていく。

そんなある日、誰もいないはずの外から助けを求める女性の声が響き渡る。果たして彼女は何者なのか?

Trivia

  • “マザー”はCGではなく、実際のスーツを俳優が着用して撮影された。デザインは『ロード・オブ・ザ・リング』や『ストレンジャー・シングス』などを手がけたWētā Workshopによるもの。 出典:Wētā Workshop(リンク先は英語記事)
  • オスカー女優のヒラリー・スワンクがこの作品への出演を決めたのは、新人脚本家のマイケル・ロイド・グリーンの脚本が素晴らしかったから。彼女はインタビューで「これまで読んだことのない、すごくユニークな脚本だったの。 “人類があまりに分断されすぎた結果、もう一度最初からやり直そう”という発想自体が恐ろしくも魅力的だった。」と語っている。 出典:Refinery29(リンク先は英語記事)

For you or Not? 不思議な魅力🪄

私はこういう作品が大好物です。どこか、ジョニー・デップ主演の『トランセンデンス』を思わせる雰囲気を感じました。内容は全然違うんですが、なんとなく近い匂いがあるんです。

あの作品が好きな人には刺さるかもしれません。『トランセンデンス』ほどの派手さはなく、しかもあちらは評価があまり高くありませんが……😅

本作もSFとしては設定に甘さがあり、人類滅亡の背景も語られません。そうした細部が気になる人には向かないかもしれません。

ただ、よくあるディストピア設定の一本でありながら、なぜか最後まで飽きずに観られる。その“不思議な魅力”がこの作品の強みなのかもしれません。

First Impression  ゴリゴリのロボット🤖

まず印象的なのは“お母さん”の見た目。ゴリゴリの機械で、人間らしさは一切ない。なぜ人間に似せなかった?と思うほどに機械的なのに、不思議と母親に見えてしまう。その存在に母性や感情が宿っているかのように。

本作の“お母さん”をCGで描くのではなく、俳優さんが演じているのが、そう思わせてくれる一端でしょう。素晴らしい発想力。

物語は外から現れる女性の登場によって大きく動き出します。しかしお母さんと女性の言うことはまったく違う。どちらを信じるべきか? 同じ人間だから信じていいのか、それともこれまで育ててくれた“お母さん”を信じるべきか。

主人公の少女だけでなく、観ている私もどちらを信じて良いか分からない、そのバランスがとても面白かったです。

Highlights 正しいのは誰?😕

観ているうちに“お母さん”への愛着はわいてくるものの、その完璧さや冷酷さに、同時に不気味さも感じてしまった。正確すぎて怖い存在。

そして作中でお母さんが娘に倫理観を教える授業。いや、ロボットが倫理観って……。まるで私も倫理観の勉強をさせられてるような気分で観てました。

ところが物語が進むと、外から現れた女性もまたどこか嘘くさい。誰を信じればいいのか? 外の世界が一切描かれないからこそ、この疑心暗鬼は観客にも強烈に伝わってきます。

「お母さんが正しいのか」「いや、女性が正しいのか」「でもやっぱり……」と考えが揺れ動き、ここまで思考を揺さぶられながら観た作品は久しぶりでした。

Let’s Be Honest なぜか書きたくなる✍️

私は観た作品すべての感想を書くわけではありません。面白くても書かないこともあります。正直に言えば、この作品は「めちゃくちゃ面白い‼️」と言い切れる一本ではありません。それでも、どうしても感想を書きたいと思わせる“何か”があったんです。

ロジックを突き詰めるタイプの人には、ご都合主義に見える部分もあるでしょう。それでも何かが私の心に刺さった。だからこうして筆を取っています。

そして個人的にツボだったのは、施設内で異常が起きた時に爆走する〈お母さん〉の姿。ちょっと怖いのに、どこか面白い。物語を追っているからこそ成立するシーンですが、それ単体でも必見だと思います🫣

好みは割れる。テンポはあくまで“会話劇寄り”かもしれない。終盤は解釈の余白が広く、その“開き”をどう受け取るかで評価が揺れる作品。

ただ、少女の“選択”に寄り添えた瞬間に、この物語は一段と強く胸に残る。

Takeaway 親とは?🤱

この作品が“ありそうでなかった”と感じるのは、母親(ロボット)、娘、そして外からやってきた女性──その誰もが“悪”ではないからかもしれない。

勧善懲悪の構図は存在せず、それぞれが自分の経験やプログラムに従って行動している。むしろこれは「母親とは何か?」を問いかける作品なのだろう。

「生みの親より育ての親」という言葉がありますが、それが人間でなくても成立するのか。意外と、想像以上に複雑なテーマなのかもしれません。

──まぁ、私にはよく分かりませんが🫣

Final Note📝

『アイ・アム・マザー』
お母さんは善か悪か。 答えは一択じゃない──選ぶのは、あなた。

Trailer 公式予告💻

出典:Netflix公式YouTubeチャンネル

Subscription 配信📺

Netflix

※ 配信情報(2025年10月時点)配信状況は変更される可能性があります。

年間300本ほど映画を観ています。 備忘録として、観たときの気持ちを飾らず素直に残しています。